- Webサイト更新フローの属人化
- 細かい修正のたびに外部業者とのやり取りが発生
- 入稿フォーマットがバラバラで非効率な運用
- Webサイト更新が標準化
- デザインから実装までのサイクルが短縮
- 新サイトの立ち上げがスピーディに
- 検索エンジンでの上位(1〜3位)表示ページが大幅に増加
- Core Web Vitals スコアが大幅改善し、ほぼオールグリーンの状態に
- 全体PVが30〜40%増加
株式会社USEN ICT Solutions(U-NEXT.HD)は、法人向けICTソリューション「USEN GATE 02」を提供しています。ネットワークやセキュリティ、クラウドサービスを総合的に提案できる強みを活かし、お客様の課題解決をサポートしています。同社では、コーポレートサイトやサービスサイトなどのオウンドメディアの運用にmicroCMSを活用しています。
今回はDX推進室の朝倉充千仁さん、伊藤良介さん、前川拓巳さん、羽生識さんに、microCMS導入の背景から効果、今後の展望についてお聞きしました。
導入の背景:属人化した更新フローで業務が硬直しがちだった
microCMSを導入する前にはどんな課題がありましたか?
-朝倉さん
microCMSを導入する前、Webサイト上のコンテンツの更新作業は、一人の担当者が依頼受付からCMS入稿、サーバーアップロードまで行っていたため、属人化していました。また、デザインや開発については外部業者へ依頼していたため、コントロールのしづらさや改修サイクルの遅さも課題でした。
そのうえ、各部門から依頼されるコンテンツの原稿フォーマットがPowerPointやGoogle スライドなどバラバラで、業務効率もかなり悪かったです。
-伊藤さん
以前は他のCMSを利用していたのですが、デザインとCMSの機能がほとんど一体化していました。それはメリットもあったのですが、表現を変えたいときなどは外部業者に依頼する必要があったため、細かい修正のたびにやり取りしなければならず面倒でしたね。
-前川さん
CMSの話とは逸れますが、外注していたこともあり、デザインデータが統合的に管理できていなかった点も課題でした。パッチワーク的にデザイン改修を繰り返していたため、同じサイト内にもかかわらずディレクトリごとに少しずつデザインが違っているような状況も起きていました。

microCMSを選んだ理由は何でしたか?
-朝倉さん
導入のきっかけは、フロントエンド領域に明るいエンジニアが入社し、Web開発の内製化が現実的になったことでした。当時の私たちはヘッドレスCMSの存在自体を知らなかったので、「コンテンツとデザイン・開発を分離し、自由度が高くWebの更新・改修ができる」という魔法のような発想に惹かれました。
-伊藤さん
そのエンジニアがmicroCMSを強く推薦してくれたのが決め手でしたね。その他にも、microCMSはアップデートを定期的にされていて、国内製で日本語のサポート対応があり、ドキュメントも充実していたので、安心して導入できました。
-朝倉さん
当社グループの推奨しているCMSが他サービスだったということもあり、microCMS導入にあたっては、グループのインフラ担当部門への許可取りが必要でしたが、グループが定めるセキュリティ要件をクリアしていたため、スムーズに承認を得ることができました。
活用の状況:コーポレートサイト、サービスサイト、メディアサイトでmicroCMSを活用
現在どのようにmicroCMSを活用していますか?
-前川さん
当社では、コーポレートサイトやサービスサイト「USEN GATE 02」に加えて、「情シスマン」「サイバーセキュリティラボ」というメディアサイトでもmicroCMSを利用しています。導入事例やセミナー情報、お知らせ、コラムなど、更新が発生するページは基本的にすべてmicroCMSで管理しています。

技術構成を教えてください。
-朝倉さん
サービスサイトとメディアサイトにはNext.jsを、コーポレートサイトにはAstroを使用しています。いずれもSSG(静的サイトジェネレーター)を採用しています。サーバーはグループ管理のオンプレミス環境にあり、microCMSのWebhookをGitHub Actionsが受け、セルフホステッド ランナーでCI/CDを実行しています。
サイトのリニューアルはどのように進めていったのでしょうか。
-前川さん
サイトリニューアルは2フェーズに分けて実施しました。1フェーズ目では、microCMSへの移行を優先するため、デザインはそのままにコンテンツと開発のみを新しい仕組みに載せ替えました。2フェーズ目では、開発効率化とブランドコミュニケーションを目的にデザインシステムを新たに構築し、見た目も一新しました。コンテンツとデザインを分離して進めることができたのは、ヘッドレスCMSならではだと思います。

-朝倉さん
コンテンツの移行は大変でしたね。APIを利用して移行する方法も検討したのですが、元のサイトが構造化されておらず書き出しが困難だったため、手作業で移行しました。伊藤がmicroCMSにおけるフィールドの型定義などをしっかり設計してくれていたので単純作業的に進められましたが、さすがにページ数が多かったので途中でみんな心が折れていましたね。
microCMS自体は2023年4月頃から導入検討を始め、実装は9月から入ることができたのですが、コンテンツ移行の影響もあり、リニューアル後のサイトを公開できたのは結果的に2024年1月になりました。
導入の効果:レビュー機能とAPI設計で効率的なコンテンツ運用が実現
microCMSを導入して、どういった変化がありましたか?
-前川さん
既存サイト(「USEN GATE 02」や「情シスマン」)のPVは20%くらい増加しています。また、新サイトの「サイバーセキュリティラボ」を立ち上げたことで、全体としては30~40%伸長しました。「サイバーセキュリティラボ」に関しては、公開から半年で万単位のPVがあるサイトに成長しています。
SEOツールで見ると、Google検索の1ページ目に表示されるキーワードの割合が、microCMS導入時期から右肩上がりで伸びています。2025年に入ってからは上位1〜3位に表示されるページも大幅に増加しました。コンテンツをどんどん更新できるようになったことが要因かと思いますが、このスピード感で記事を公開できるようになったのは、間違いなくmicroCMSのおかげです。

Core Web Vitalsのスコアも、以前は「改善が必要」なページが多かったのですが、リニューアル後すぐにオールグリーンの状態になりました。Next.jsのようなモダンな技術とmicroCMSの組み合わせで、これだけの効果が得られたと考えています。

-朝倉さん
デザインと開発が内製化され、コンテンツの更新作業が標準化されたことによって、業務効率や生産性が飛躍的に上がりました。
-伊藤さん
新サイト(「サイバーセキュリティラボ」)の立ち上げにおいても、microCMSは大きく貢献してくれました。microCMSでのサイト構築のノウハウが蓄積されていたおかげで、「サイバーセキュリティラボ」はコンセプト設計からデザイン、開発、公開まで約2ヶ月と、外注では考えられないくらい短期間でローンチできました。
-前川さん
「サイバーセキュリティラボ」には、「インシデントニュース」という国内で日々発生するサイバーセキュリティ事故を取り上げるコンテンツがあります。「インシデントニュース」は、別部門の担当者が原稿をmicroCMSに直接入稿し、私や羽生がレビューして毎営業日公開していくという運用ですが、これはmicroCMSなしでは考えられませんでした。
-羽生さん
私は最近までインサイドセールス部門に所属しており、まったく違う業務に携わっていました。microCMSはもちろん、CMSの利用経験もなかったのですが、すぐに使えるようになりました。社内で作成したオリジナルのマニュアルもあったのですが、実はほとんど読んでいなくて(笑)。口頭で教えてもらっただけでも問題なく業務ができています。

コンテンツの制作フローを教えてください。
-前川さん
ほとんどのコンテンツを我々で制作していますが、一部の記事やセミナー情報を皮切りに、別部門の担当者も直接microCMSに入稿するようになってきています。今後もどんどん展開していきたいですね。
-羽生さん
我々以外が入稿した記事は、microCMSのレビュー機能を使用することで安全に公開できています。

-伊藤さん
レビュー機能のおかげで、各部門が作成する原稿のクオリティも向上していますね。たとえば、以前は表記ルールを統一できていないなどの課題があったのですが、レビュー機能で修正事項をやりとりすることで、コンテンツ作成者もそういったことを意識するようになってくれたと感じています。
コンテンツを作成する機会がある部門には、それぞれが担当するコンテンツAPIごとに入稿権限を割り当てています。レビューして公開する権限は、前川や羽生などWebサイトを管理するメンバーのみに付与しています。

-前川さん
すべてのコンテンツを管理する立場としては、APIグルーピング機能も非常に助かっていますね。当社では、「サービスサイト(USEN GATE 02)」「メディアサイト(情シスマン)」「ラボサイト(サイバーセキュリティラボ)」「LP・その他」「コーポレートサイト」という5分類で管理しています。

AIツールと連携し、活用の場を広げていく
今後のmicroCMS活用計画を教えてください
-朝倉さん
microCMSはJSON形式でデータを持ってくれているので、活用の汎用性が高いと感じています。Webサイト上のサービスや導入事例の情報をmicroCMSからJSONで取得することで、インサイドセールスがお客様へ架電する際に最適なものを提案してくれるAIレコメンドツールの開発に一役買っていたりします。

microCMSに期待することはありますか?
-前川さん
microCMSの開発ロードマップを見ると、ほしかった情報が多く掲載されていてありがたいです。検討事項や実装ステータスなどを公開してくれているので、ちゃんとユーザーのことを考えてくれているんだなと感じますね。
現在ロードマップに掲載されているもののなかでは、「全文検索」の精度向上をお願いしたいです。当社は“マルチサービスベンダー”として多くのサービスを取り扱っているので、仕様や名称の変更も頻繁に発生します。その際、変更すべき箇所を一括で検索し・置換できるような機能を楽しみにしています。
取材協力:エディット合同会社(ライター:藤井亮一 撮影:関口佳代)
